R6年10月21日、以下のツイートをもとに、消費者庁へ問い合わせてみました。
ツイートのおもな内容は以下の3つ。
- 「治ります・改善します・即効性あり」などの断言系フレーズ使用はOK or NG?
- 医師 or 同業者の推薦は報酬ありでも具体的な指示がなければPR表記なしでOK?
- 悪質な景品表示法違反で逮捕されるのは運営者(依頼主)だけでなく、広告制作者やコンサルも逮捕の対象?
回答内容によっては、自分の仕事(おもに治療院HP制作)にも大きな影響が出るので、内心では気が重たかったです……
問い合わせた感想としては
「ああ、やっぱりね」
「え?そうなの?」
といった感じ。
ご自身のSNSや治療院HPに記載する内容のヒントだけでなく、自分の身を守るための知識として参考にしていただければ幸いです。
それでは、本編をどうぞ。
①「治ります・改善します・即効性あり」などの断言系フレーズ使用はOK or NG?
消費者庁の回答
掲載OK
え?
と思うかもしれませんが「治ります」などの断言系フレーズは景品表示法で(掲載内容を)規制できないとのこと。
とはいえ、世の中そんなに甘くはありません。
ポイントは以下の2つ。
- エビデンス(根拠)がなければ景品表示法違反に
- あはき法などの法律に準拠した内容で
a.エビデンスがなければ景品表示法違反に
自分のHPなどで効果・効能を示す記載をしたとしても「明確な根拠やデータがなければ、景品表示法違反の対象になる」とのこと。
- 地域NO.1
- 治療実績〇〇件
とおなじく、明確な根拠やデータがなければアウトのようです。
※景品表示法違反における不実証広告規制。
あはき法などの法律に準拠した内容で
担当者の回答によると、掲載内容までは景品表示法で規制できないため、
- 柔道整復師法・あはき法などの法律が優先
- 医療広告ガイドラインに準拠した内容にするのが良い
との回答をいただきました。
現時点では、柔道整復師法・あはき法の場合、有料広告に対する規制はあるものの、通常のHPの内容までは細かく規制されていません。
また、医療広告ガイドラインはあくまでも「好ましい」としているため、ガイドラインから逸脱しても悪質でなければ法的な罰則はおそらくないはず。
とはいえ、前述したように、エビデンスがなければ景品表示法違反の対象となるため「記載しない方が良い」と考えております。
②医師 or 同業者の推薦は報酬ありでも具体的な指示がなければPR表記なしでOK?
書く内容に具体的な指示あり or なし関係なく報酬がある場合はステマ認定される可能性あり(治療院HP内で医師の推薦・同業者の推薦そのものはOK)
ステマ規制は個人アカウントによる口コミ投稿を対象としているため、自身が運営する治療院HPなどであれば報酬ありの推薦を掲載しても問題ありません。
ただし、RAIZAPの件でもあったように、報酬ありの推薦については、調査が入ったときにステマ扱いとする判断基準になりうる可能性が高いとのこと。
RAIZAPの事例についてくわしく(タップして開く)
RAZAPより報酬を受け取っているSNSアカウントの投稿を、RAIZAPが運営・管理するWEBページに掲載したためステマと認定。
課徴金は数十億円との試算も。
「報酬ありで依頼を受けました」などの記載があれば問題ない
とも伝えられました。
医師・一般の方関係なく個人アカウントで治療院を推薦する場合は
個人アカウントが報酬を受け取っている場合、PR・広告などの記載がなければステマ扱い
この点は、2023年10月1日からのステマ規制と変わっていません。
消費者庁の調査が入っても、事業者や個人アカウント運営者が「報酬を支払っていません(受け取っていません)」と言い切れるなら見逃されるかも?
と思いましたが、お上の仕事なので帳簿などもチェックされるでしょうね……
一般消費者の口コミ割による高評価はタチが悪い
回答していただいた消費者庁の方によれば、
インフルエンサーや有名人などの口コミ・SNS投稿よりも、一般の個人アカウントによる口コミ・SNS投稿の方が、ステマと判断するのがむずかしい
とのこと。
インフルエンサーや有名人であれば「おそらく報酬が発生しているだろうな」と多くの人が予想できるいっぽうで、一般の方の投稿について消費者庁の人でも区別するのがむずかしいようです。
余談:担当者により回答が変わる?
以下は、AERA dot.:消費者庁表示対策課、景品表示法における「広告の定義」について説明より引用したものです。
消費者庁表示対策課は「企業側が広告料を払っていても、インフルエンサーは広告主側から表記について何も言われていなければ、PRなどの表記をする必要はありません。」と説明したそうです。
治療院HPに置き換えると、書く内容を指示していなければ、医師・同業者の推薦にも「PR表記は必要ない」ともとらえられます。
今回(R6年10月21日)に消費者庁へ問い合わせた際には、
書く内容に具体的な指示あり or なし関係なく報酬がある場合はステマ認定される可能性あり
と伝えられているため、担当者や確認したタイミングによって回答が変わる可能性もあります。
「報酬を支払ってまで推薦を受けるべきか?」については、個人のモラルが問われるところかなと。
③悪質な景品表示法違反で逮捕されるのは事業主(依頼主)だけでなく、広告代理店やコンサルも逮捕の対象?
- 対象は事業主(依頼主)のみ
- 景品表示法違反により直罰が課せられるように変更
- 逮捕される可能性はひくい(詐欺レベルなら逮捕もあるかも?)
※直罰と逮捕は別物
ステマをふくめた景品表示法違反の対象はあくまでも事業主で、関与した広告代理店やコンサルが景品表示法違反による処罰を受ける可能性はいまのところない
と回答をいただきました(残念……)
以下は、担当者より教えていただいた消費者庁HPに書かれていたもの。
当社は広告代理店です。メーカーとの契約により、当該メーカー商品の広告宣伝を企画立案した結果、当該商品の品質について不当表示を行ってしまいました。この場合、広告代理店である当社も景品表示法違反に問われるのでしょうか。
A
景品表示法の規制対象である「広告その他の表示」とは、事業者が「自己の」供給する商品・サービスの取引に関する事項について行うものであるとされており、メーカー、卸売業者、小売業者等、当該商品・サービスを供給していると認められる者により行われる場合がこれに該当します。
他方、広告代理店やメディア媒体(新聞社、出版社、放送局等)は、商品・サービスの広告の制作等に関与していても、当該商品・サービスを供給している者でない限り、表示規制の対象とはなりません。しかしながら、広告代理店やメディア媒体は、広告を企画立案したり、当該広告を一般消費者に提示する役割を担うことにかんがみ、当該広告に不当な表示がなされないよう十分な注意を払ってください。
消費者庁HP
アンダーラインを引いた箇所を読むかぎりでは、いまのところ関与した広告代理店やコンサルが景品表示法違反による処罰を受ける可能性はないようです。
2024年10月1日からの大きな変更
いままでは、景品表示法違反があっても措置命令(注意)や課徴金ですみましたが、2024年10月1日からは罰金刑が課せられる可能性もあるようです。
✅直罰と逮捕は別物
以下はAIの回答ですが、おおむね正しいかと。
直罰:罰金や営業停止処分など
行政処分の一種: 裁判を経ずに、行政機関が直接罰則を科すこと。
主な罰則: 罰金、業務停止など。
目的: 法律違反行為を迅速に抑止し、法秩序を維持すること。
逮捕:〇〇罪などの罪名&身柄拘束
刑事訴訟法に基づく手続き: 犯罪の疑いがある者を拘束すること。
目的: 犯罪の証拠を保全し、逃亡を防ぐこと。
後の手続き: 逮捕された者は、警察に連行され、その後、検察庁に移送されます。検察庁は、逮捕の妥当性を審査し、起訴するか否かを決めます。
消費者庁は通報があってから動く
治療院HPで
- 効果・効能などの記載
- ステマと思われる医師の推薦
などがあった場合でも、通報があってから消費者庁で調査を進めるとのこと、
つまり、通報がなければスルーされる可能性も高いといえそうです。
RAIZAPのように派手な広告をしている場合なら、消費者庁みずから動くケースもあるようですが。治療院レベルだと期待はできなさそうですね……
まとめ:個人のモラルが問われる
①「治ります・改善します・即効性あり」などの断言系フレーズ使用はOK or NG?
景品表示法的には掲載OK
ただし、調査が入ったときに具体的なデータを提出できなければアウト
②医師 or 同業者の推薦は報酬ありでも具体的な指示がなければPR表記なしでOK?
書く内容に具体的な指示あり or なし関係なく報酬がある場合はステマ認定される可能性あり(掲載そのものはOK)
③悪質な景品表示法違反で逮捕されるのは事業主(依頼主)だけでなく、広告代理店やコンサルも逮捕の対象?
- 景品表示法の対象は事業主(依頼主)のみ
- 逮捕される可能性は極めて低い
個人的な意見としては「治ります・改善します・即効性あり」などの断言系フレーズがOKなのはおどろきでした。
とはいえ、あくまでも景品表示法の話であり、柔道整復師法・あはき法や医療広告ガイドラインを意識したHP(広告)にしておいたほうが無難とは思いますが……
いずれにせよ、
「治ります・改善します・即効性あり」
「医師・同業者の推薦」
などのキラキラフレーズを使わないと人を集められないなら、それこそ”根本改善”が必要なのかもしれませんね(知らんけど)
追伸:ステマにならない口コミを集めたい人向けnote
治療院HP制作のご依頼を受けたクライアントが、実際に取り組んだ手法をまとめています。
実際に使用した資料なども掲載していますが「魔法のテクニック」ではないため、あらかじめご了承願います。